理屈ではなく、感じるブローティガンの世界

アメリカの鱒釣り (新潮文庫)

アメリカの鱒釣り (新潮文庫)

 『西瓜糖の日々』を読んでからブローティガンの存在が気になっていた。この何とも不思議な世界観。何みたい、という比喩ができない。ブローティガンブローティガンみたいとしか言いようがない。それほど特徴的な世界を描く作家である。『西瓜糖の日々』のような幻想世界とはまた違う、リアルな現実での奇妙な感じ、どこかが少しずつ変。これが大ベストセラーになるというのだから、アメリカは相当変わった国だと思う。日本でも熱狂的フリークは存在するけれども、一般の読者にはバックグラウンドが違い過ぎて理解に時間がかかると思う。と思ったら、あとがきで柴田元幸氏が、藤本和子訳の『アメリカの鱒釣り』をはじめて読んだときに、単に「カッコいいなー」と思っただけだったと書いていた。
 その頃柴田氏は「人生の意味」や「作者の教え」を小説から読み取らなければ、という脅迫観念があった。しかしブローティガンを読んで、そんなのいらないんだ、まずは一行一行の奇想ぶりや語り口の面白さを楽しめばいいのだ、という解放感を感じたのだそうだ。
 これを読んでわたしはほっとした。正直、ブローティガンの世界、この雰囲気は独特で好きなのだけれども、理解ということを考えると、わたしは急に自信がなくなってしまうのだ。一体、ブローティガンの何がわかるというのだろうか?と。
 そうか、それでもいいのか。理屈ではなく、身体で感じて、この世界に身を委ねていい物語なのだ。むしろそういう読み方しかできない物語なのだ。それがブローティガンの世界の魅力なんだと思う。
西瓜糖の日々 (河出文庫)

西瓜糖の日々 (河出文庫)