『恐るべき子供たち』/コクトー

恐るべき子供たち (光文社古典新訳文庫)

恐るべき子供たち (光文社古典新訳文庫)

 この、純粋で儚い狂気、残酷さ、ねじれた愛、破壊的な日々、おお、まさしくこれがフランス映画だ。無邪気さから、物語が進んでいくごとにせまってくる何とも言えない切なさ、転げ落ちるように、その回転を誰も止められなくなっていく無力感。
 どちらかというと、陰とか静とかしっとりして落ち着いた文化を持った国に生まれたわたしら日本人から見たら、フランスなんて、花の都パリだのニースだのプロヴァンスだの何だの(行ったことないのでわからないけど)、明るく伸び伸びした文化の国のように想像してしまうのだけど、この国が生み出す作品らは、どうしてこうも、救いようのないような、儚い、どん詰まりの美しさを放つのだろうか。「死」すらも、お洒落にしてしまうような雰囲気があるんだから。
 この新訳本が出来上がるきっかけを、訳者あとがきを読んで知った。翻訳者の中条氏が、ある出版パーティーで版画家の山本容子に「恐るべき子供たち」の翻訳ってどうもわかりづらいのよね。中条さん訳してよーと言われたのが発端だとか。山本容子、やっぱりすごいなぁ。枠を越えた影響力がある。文学と融合する魅力を持った芸術家だと思う。
 あーそれにしても、うちには、まだ手つかずの光文社古典新訳文庫が山とある。はっきり言おう、発売されているこのシリーズは全て揃っている。さて、わたしは、生きている間にこの名作たちを全て読破できる?まいったなー、幸せな悩みだ。