オジサンの初恋回想記

初恋 (光文社古典新訳文庫)

初恋 (光文社古典新訳文庫)

 言わずと知れたロシア文学
以下ネタバレあり
 ストーリーを知らず、今後読む予定のある方は読み終わってからどうぞ。

 16歳の少年ウラジミールは年上の公爵令嬢ジナイーダに恋をする。少しずつ、この感情が何なのかを知って行く少年。だけどもジナイーダは、少年に対して優しくしてみたり冷たくしてみたり、少年は彼女の常に変化する態度に日々翻弄される。沢山の男たちがこぞってジナイーダに気に入られようと必死になる中、ある夜に彼女の家を訪れた男の姿を見てウラジミール少年は驚いた。何とそれは・・・・ウラジミールの父であった!
  16歳の少年の初めて喜び、苦悩、嫉妬、哀しみ、驚き、そういった感情をとおして成長していく姿が描かれている。何だろ、わたしは女だからか、このジナイーダにはほとんど魅力を感じなかったのだけれども、だって、いろんな男に気を持たせてその気にさせて競わせて楽しんでいるんだもの、わたしの趣味には合わない、それでも、ウラジミール少年や他の男たちが何故彼女に惹かれるのかは理解できる。それは、彼女の陰の部分なんじゃないかと思う。
 公爵令嬢とは言っても現在はお金がなく、母親はいつもあちこちから借金をして裁判にかけられている。ウラジミール少年の家にもお金を無心してくれとやって来る場面もあるのだ。彼女が生きて行くためには、より「良い男」と結婚する必要がある。それを小さい頃から自覚していたからこそ、男を惹き付ける術を身につけてきたのかもしれない。男の心を弄んでいた彼女だが、あるとき恋に落ちた。それが、ウラジミールの父であったというわけ。父とジナイーダが密会するところを発見したウラジミール少年の驚きはすごい。それがある密告の手紙で母にばれ、母は半狂乱。だって「あの男たらし」と文句を言っていた、二十歳そこそこの小娘と夫が浮気ですよ。しかも、金を貸している家ですよ。
 結局、この件が発覚してからウラジミール少年の一家はこの地を去ることとなる。その後、少年は父とジナイーダの別れの場面にも遭遇する。何とも何ともこの「初恋」という甘酸っぱいタイトルの中には、家族を巻き込んだ(家族が巻き込んだ?)ごたごたの物語が含まれていたのだ。
 成長した少年がそんな青春に思いを馳せて綴る言葉にこんな文章がある。 

青春に魅力があるとしたら、その魅力の秘密は、なんでもできるというところにではなく、なんでもできると思えるというところにあるのかもしれません。持てる力を、他に使いようがないまま無駄遣いしてしまう、そこにこそ青春の魅力が潜んでいるのかもしれません。 

 確かにそうだよなぁ。青春時代、さて、何が出来たのか?と思い返しても特に思い当たらず、ただ漠然と「わたしは何でもできるんだ!」と未来に希望をいっぱい蓄えていたという気がする。実際に過ぎ去ってみれば、あの可能性に満ちた、満ちていると思い込んでいるわたし、という存在が貴重であることは確かだ。