『ことばの食卓』/武田百合子

ことばの食卓 (ちくま文庫)

ことばの食卓 (ちくま文庫)

 夢なんだろうか物語なんだろうか。富士日記を読んでいる時に感じる現実感がこの『ことばの食卓』では薄く感じる。
 食べものに関する思い出を綴った文章で、百合子さんが回想する子供時代の生活や、思ったことなんかが書かれている。『枇杷』で描かれる夫、泰淳の姿は少し寂し感じ。この本自体に流れる空気が何となく寂しい。野中ユリの独特の絵がまたその色のないような世界を演出している気がする。百合子さんのいきいきした感じや激しさが好きなわたしとしてはちょっとモヤモヤ感が残るエッセイだった。夫が生きていてそれを支えている時の人に読ませるつもりのない文章と、自分が作家として書いた文章の違いなんだろうか。