『決壊』/平野啓一郎

決壊 上巻

決壊 上巻

決壊 下巻

決壊 下巻

 暑い。今日とうとう『決壊』を読み終えた。汗にまみれて、手を黒く汚しながら最後まで。吐きそうになりながら。もう、これは何と言っていいのか。ネットとリアルを行き来しながら生きてるのがリアルになっている今、はじめて生まれる文学だ。昔は、人が心の奥底で何を考えているのかなんて知る機会はなかった。表面的に取り繕って、「こう見て欲しい」と演出した人間の言葉をリアルで聞くだけだった。しかし、近ごろは、見ず知らずの人間の闇を、いとも簡単に見つけてしまう。インターネットという匿名の仮想世界で。
 悪魔がささやく言葉は耳をふさいでも響いてくる。なぜならそれは内なる声だから。あれは誰?それはあなた?これはわたし?それもわたし?・・・混乱してくる。どんどん、狂の世界へ足を踏み入れる。
 すごい本を読んでしまったなー。登場人物の会話、設定場所のリアリティ、どれ一つとっても曖昧さやほころびがない。圧倒されるような知性。スキのない文章だった。すごく集中して、一言も逃さないように読むことになるのでものすごく疲れた・・・。ずっしりと重たい。小説でありながら、現実。これは今そこらで起こっている現実なんだ、と思う。・・・汗が噴き出る。


追記:
 平野啓一郎は、頭がいい。ただ頭がいいだけじゃない。世の中の頭の良い人というのは、わたしのように頭の悪い人間が「わからない」と思うことをわからない。そういった人間が見ている世界を知らず、そこからの視点を知らないことが多い。だから書くこともある種自分本位というか、理解しない人がいるなどとは予想せずに書く。しかし、彼は違う。頭がいいのに、そうでない人の目線を知っている。その人たちがどう見ているのかを理解している。そこが彼の頭の良さであり、それを知らない人の何倍も賢いという印象を与える。