『幼な子われらに生まれ』/重松清

幼な子われらに生まれ (幻冬舎文庫)

幼な子われらに生まれ (幻冬舎文庫)

 『決壊』を読み終えてからしばらく読書生活の上での放心状態が続いた。他の本を読んでも集中できなくて、また他の本に手をつける、そしてまた途中で他の本へ移って、中途半端なまま時間が過ぎてしまう。あの本の強い影響力にひれ伏すしかない状態だった。そんなこんなで久しぶりの読書。重松清の本だ。彼は家族について書いている本が多い。特に父親の立場から見た家族の姿。家族への愛や葛藤なんかを。この小説は特にそれが色濃く出た作品だ。離婚や再婚が繰り返されるのが珍しくない時代で、主人公も今の妻も共に再婚同士。妻の連れ子2人との4人暮らしだ。長女は物心ついてからの「親子」のため、どうしても馴染まない。新しい家族が出来たと知って激しく反抗をし出して「本当のお父さんに会いたい」と言い始める。一方、主人公は前の奥さんとの間にできた実の娘に年に数回会っている。自分も会っているのだから、長女に本当のお父さんと会わせてもいいのではないか、と思い始める。妻は、会わせたくない。むしろ、夫が前の奥さんとの娘に会わないで欲しいと思っている。
 ああ、こういう状況って沢山あるんだろうな。本当の子どもと連れ子との間で、何かを比べてしまったりということもあるんだろう。子どもを持たないわたしにはわからないことだけど、予測はできる。夫婦お互いの過去への時を超えた嫉妬というか、入り込めない空間への切なさというか、そんなものも。
 主人公は、その中でずっと葛藤を繰り返している。血の繋がらない娘たちのことを本当の子どものように愛そうと。そして新しい自分の子どもが生まれることへの不安。そう、喜びよりもむしろ不安。本当にこれでいいのだろうか、とずっと思い悩んでいる姿。少しだけ違和感を感じてしまうくらい主人公は悩んでいる。そして少しずつ少しずつ成長していく家族。
 はっきり言ってここに出て来る人間に魅力を感じない。もやもやして陰気な印象の夫、ダメ男との間に2人も子どもを作ってしまった男にすがるだけの人生を歩む妻、心理学者で仕事に打ち込みたいからと勝手に子どもを堕胎してしまった元妻、そして妻の連れ子の小学生である反抗的な長女・・・。みんなそれぞれに好きになれないなぁ。全体を通しても暗い印象だった。重松清の本の中では今のところ『送り火』という短編集が1番好きかな。『流星ワゴン』もイマイチ乗り切れなかったし・・・。やっぱり親にならなきゃわからん文学なのかな?