わたし、泣きすぎ!

アジアンタムブルー (角川文庫)

アジアンタムブルー (角川文庫)

 何となく、どこかでずっと気になっていた本を図書館で借りる。内容は全く知らなかったんだけど、表紙の感じで、きっと爽やかで重くない、クール、都会的、そんなストーリーだと勝手に思っていた。それが開けてびっくり!愛する人が死を目の前にしたときにいったい何ができるか、だなんて。知っていたらきっと避けていたジャンルのはずだ。その意味で、予備知識がなくて本当に良かったと思う。素直にこの本を読めて良かった。

 これはいわゆる喪失の物語だ。主人公の隆二が吉祥寺のデパートの屋上でタバコを吸い続けている。ゼンマイのねじをぎりぎりと巻き上げて、締め付けられて行くような感覚。そして、もう巻く余地のないゼンマイを無理やり巻き上げたときのいやな感触。それを打ち消すかのようにタバコに火をつける。このゼンマイの感覚!!私にはわかってしまった。忘れられないあの嫌な感触・・・。理解できる人は胸が締め付けられる思いがするはずだ。
 少しずつ、過去のことが明らかにされていく。葉子に出会った日のこと。クリスマスに作ったボルシチエルトン・ジョンの「Your Song」。葉子の撮る水溜りの写真。隆二の中学高校時代の話になると、札幌の街の風景や風の爽やかさまで伝わって来た。葉子が末期の癌に冒され、最期の場所をニースにしたいという葉子の希望どおり、2人はフランスへと飛ぶ。海を見て過ごす。2人の最後のセックスのシーンは泣けて泣けて仕方がなかった。愛情が深すぎて切ない。こんなに泣けた小説は久しぶりだ。なんだか、私の心の奥深くに浸透してきて、伏せた痛みに容赦なく触れ、そしてそこをしっかりと治癒させるような本だった。
 改めて、愛する人を思いやり、大切にしようと思ったよ。いつも思ってはいるんだけどね・・・。本当、改めて思った。