生者も死者もこんにちは、さようなら。

レクイエム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

レクイエム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

 イタリア人であるアントニオ・タブッキポルトガル語で書いた小説『レクイエム』を読む。タブッキの名前は、須賀敦子さんの本を読んでいて何度も見かけていたのだけれど、最近『クレアトラベラー』のバックナンバーでこの本の紹介に行き当たった。何度も出会う時は、読むべきとき。という自分の信念に基づいて(?)、別の用件で訪れた本屋で探してみると、あった!さっそく入手した。
 主人公であるわたしは、生きてる人や死んでしまった人、に会うためにリスボンの街をさまよい歩く。死んでしまった友人や恋人、若かりし頃の父、過去の詩人、語り合っては別れ、現在と過去や現実と夢が混ぜ合わさった世界が展開していく。読み始めに度肝を抜かれ、整合性だ何だとくだらんことを考えてしまい戸惑うのだが、そんなのはすぐに吹き飛ぶ。気づくと、その奇妙な空間の居心地良さにどっぷりと浸かってしまう。羊男に出会ってしまったような気分だ。あ、もう、自由でいいのね、っていう安心感のようなもの。ずっと漂っていたい心地よさ。ポルトガルの太陽の眩しさも、夜の闇の深さも伝わってくるようだ。できることならもう一度、この本を旅先で読んでみたい。本当に本当に素敵な小説。私が初めて出会った種の。