仰臥漫録

仰臥漫録 (岩波文庫)

仰臥漫録 (岩波文庫)

正岡子規が死の直前まで綴った病床日記。日々は繰り返される。快方に向かうでもなく、淡々と壮絶に。

九月二十一日彼岸の入 昨夜より朝にかけて大雨 夕晴
便通、繃帯とりかへ
朝 ぬく飯三わん 佃煮 梅干 牛乳一合ココア入 菓子パン 塩せんべい
午 まぐろのさしみ 粥二わん なら漬 胡桃煮付 大根もみ 梨一つ
便通
間食 餅菓子一、二個 菓子パン 塩せんべい 渋茶 食過のためか苦し
晩 きすの魚田二尾 ふきなます二椀 なら漬 さしみの残り 粥三椀 梨一つ 葡萄一房

 子規は、寝返りを打つこともできない身体の、痛みに耐えきれず、絶叫号泣する。家族(母と妹)は彼を看病するためにほとんど家を出ることができない。
 ある日、子規は母親を使いに出した隙に、自殺をしようかという気持ちにとりつかれる。剃刀で喉を掻き切ろうか、小刀で胸を突き刺そうか・・・子規は葛藤を繰り返す。でも、もし失敗して苦しんだら?と考えまた思い悩む。

 死は恐ろしくないのであるが苦しみが恐ろしいのだ 病苦でさへ堪へきれぬにこの上死にそこなふてはと思ふのが恐ろしい そればかりでないやはり刃物を見ると底の方から恐ろしさが湧いて出るやうな心持もする 
(中略)
考へて居る内にしやくりあげて泣き出した その内母は帰つて来られた 

 確実に死がそこにあることによって「生きてる」ことをありありと感じる。食べる食べる食べる、眠る眠る眠る、便通便通便通・・・。哀しくて美しいもの。電車を待つホームでわたしは泣いた。