味覚っていう不確かなものに、ちょっと苦しむ

 風邪気味で味覚が変になった。いつもの食べ物がいつもの味じゃない。けど待てよ。これが本当の味なのか。たまたまずっと麻痺していて今正常になったとしたら?本物ってなんだ?偽物ってなんだ?そもそも、わたしが感じる味と、あの人が感じる味、それが完璧に一致しているかなんて確かめようがない。風邪気味の私が感じる、この味、をあの人はこれまでの人生で健康なときに毎日感じている味かもしれない。となると絶対的に正しい「味」っていうものはないってことになる。「本来の味」を知覚することはできない。感覚器官を通して認識しているにすぎない。世界の在りようを、それそのものとして認識できないのだ。要するに、私が見たり聴いたり味わったりするのは「現象」であって「物自体」ではない、というあれに繋がる。カントの言いたいのはこういうことか!
 「現象」だけを見ることができる、という説明をするときに先生は、「我々は生まれながらに決して外すことはできない眼鏡をかけているということになります」と言って眼鏡を外した。(って、外すのかい!)