いたこニーチェ

いたこニーチェ

いたこニーチェ

 おもしろすぎて一気に読了。
内容はこんなかんじ↓(帯より)

主人公(吉田武昭)はいつももやもや、人生含み損を抱えるサラリーマン。そんな武昭の目の前に、ある日突然、大哲学者ニーチェが高校時代の同級生・三木の身体を借りて降臨する。「今の歪んだ世界を正すため、お前を殺す!」と息巻くニーチェ先生。よくよく聞けば武昭は、世界に未曾有の危機をもたらしている元凶、プラトン・カントといった哲人の末裔らしい。ニーチェ曰く、「この馬鹿どもが間違ったキリスト教の世界観を広めてしまった為に現代がメチャクチャになりかけている。よってお前の代で、この負の連鎖を断ち切るっ」かくして武昭は世界を救うために「改心」すべく、ニーチェ先生にありがたいプライベートレッスンを授かるわけで…。ニーチェがわかって面白い、新感覚哲学小説。

 一見ドタバタで、次々に巻き起こる事柄のおもしろさに惹かれてしまうけれど、その中にニーチェの哲学の断片がキラリキラリと収められている。たとえば「神は死んだ」について、キリスト教批判について、権力への意志ルサンチマンについて・・・。言葉は聞いたことがあって、けど完全に理解しているとは言い難い・・・なんていう人は特に、読み進めるうちに主人公と共に洗脳から解けていく自分を発見できる。私が実際そうだったから。ニーチェの著作をちょっとでも読んだことがある人は、クスリと笑い、理解を深くすることだろう。ニーチェを読んだことがなくても楽しめてハッとすること間違いなし。

神の国は存在しない!真の世界は存在しない!普遍的真理は存在しない!最後の審判はやってこない!現実を直視しろ!イデオロギーにおぼれるな!理想によって現実を測るな!言葉と概念を疑え!対立と犠牲を恐れるな!からだを蔑視するな!美と歴史を尊重せよ!人間の≪生≫を汚すな!唯一の自分の世界を切り開け!健康な肉体で己の真理を捏造せよ!

 読み終わった時、この言葉の意味が全部わかるようになる。そしてそれはこれからを生きる上で宝になるはず。少なくとも私は勇気づけられたし、なんか笑っちゃいそうに楽しい。
 哲学を難しい言葉で表現するのはある意味において「簡単」かもしれない。それはきっと、そういう世界に携わるひとは誰でもやることだから。でも、理解が難しい哲学や思想を誰にでもわかりやすく、しかもおもしろく興味深く、身の丈にあった形で、理解させてもらえるような本はとても少ない。そんな本に出会えて嬉しい。こういう本を小馬鹿にする人はたぶん、難解な哲学や思想を「自分は理解できる人間である」という優越感に浸っていたいだけだと思う。本当は、ニーチェであれカントであれ歴史に名を残す大先生たちの思想を理解したから何だ、という話だ。だって、生きるのは自分だ。あの先生方は発言をして死んでしまっているのだ。考え、考え、哲学して生きていくのは「わたし」しかいない!その考え、考え、するのに、「こういう見方もありまっせ」と別の角度からのきっかけとかヒントを与えてくれるかもしれないだけなんだ。暗記できたから言葉の意味を定義できたからって、人生にはこれっぽっちも役に立たないしね。