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それからはスープのことばかり考えて暮した

 予想通り・・・これを読んでる途中でスープを作り始めてしまった。じゃがいもの。形が残っていてどろどろしたポタージュスープ。そして、自家製酵母のカンパーニュを切って、トマトときゅうりとチーズを挟んで食べた。<トロワ>の味を思い浮かべながら。
 不思議な小説だった。平凡でぼんやりとした日々のようで、だけど運命的な出会いが隠されていて、それでも劇的でなく淡々と展開していく。そこにあるのはシンプルで美味しいサンドイッチと温かくてやさしい気持ちになれるスープ、そして古い映画。みんながちょうど良い距離で、温めあえるような心地よさ。これは、人生の一面でしかないとわかりながらも、この世界に浸りたい、と思った。祈りにも似た感情でそう思った。それはたぶん『死の棘』を読んだ間際だったからだろう。何故こうも、人間が生きることは掴みどころがないのだろう。どちらも、人が生きているところを描いているのに。そして、どちらかだけに属することはできないなんてね!
 ただ、いずれの世界でも「食べる」ことからは逃れられない。悲しくて味のしないご飯でも、それだけで幸せな気分になれるスープでも、とにかく、人は料理を作って食べるのだ。私も、自家製酵母2回目の作品、リュスティックが今焼き上がったところ。どうにか、「それからはスープ〜」のほうの世界に繋ぎとめようとパンを焼き続けているのかもしれない。