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夜と霧 <新版>

夜と霧 新版

夜と霧 新版

 読了。読了してしまった。

 わたしたちは、おそらくこれまでどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。では、この人間とはなにものか。人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。人間とは、ガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ。

 これに、あーでもないこーでもない、と感想を述べるのは無理だ、と思った。読み終わってわたしはただ、自分の手を見た。腕を見た。そこに薄く見える血管を見た。この皮膚の中にある肉、そしてこの肉体の中にある「こころ」?「魂」?「わたし」?というこの、今、心を震わせている「存在」そのものに意識を向けた。
 泣きたいけど、なんで泣きたいのかわからない。もう、人間であることや、命であるところの自分、そしてその「生」と「死」を含めた人生それ自体の哀しみと怒りと喜びと、、、その壮大すぎる「なにか」にかきたてられる。全体である「それ」に。