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仏壇におはぎ

仏壇におはぎ

仏壇におはぎ

 泰淳と百合子の娘である武田花さんの食べ物にまつわる写真エッセイ。今日往来座外市で買った本。歩き疲れたので早目にベッドに入って眠るまで読もうと思ったら脳味噌は完全に冴えてしまい読了。そしてまた起きだしてパソコンを立ち上げてこれを書いている。
 やっぱり百合子さんの娘だ。あまりにおもしろくて何度も吹き出してしまった。「普通の女」ではない。
 男友達A男とその彼女B子と出掛けたときのこと。見世物小屋にあった双頭牛の剥製。手を触れないでくださいと書いてあるにもかかわらず、牛の頭をバシっと叩くB子にいらいらする花。その夜の酒の席でとうとう堪忍袋の緒が切れる。

B子がお酒も飲んでいないのに、やたらとはしゃぎ、嬌声を上げたりするのでムッとなったのを覚えている。しまいに、「Bちゃん、牛のお乳が飲みたーいー」などと甘ったれた声を上げたのには、もう我慢がしきれず、「ちゃんと牛乳と言え、牛乳と」と、私は怒った。剥製の牛の頭を叩いたことも怒った。慌てて私をなだめるA男に、「奇抜なことを言って、自分を個性的な人間だと思わせたいという魂胆が気に入らぬ、可愛くない」。そんなようなことを言い返した私も可愛くなかったか・・・・。

 何だか痛快だ。
 かと思えば、味噌汁を温めていて足の甲に思いっきりこぼして叫び、その足をシンクの中に入れ水をかけたと思ったら、もう一方の足がもつれて倒れ、その勢いでゴミ箱を倒し・・・なんてこともやる。百合子さんの文章を読んでいて感じるあの、飾らなさ、自分を良く見せようと意識せずにさらけ出すことによって際立つ美、みたいなのを花さんの文章にも同様に感じた。やっぱり好きだなーこういう人。
 読んでいてすーっと浮かんでくる風景。何だか懐かしい気さえしてくるのは何故なんだろう。