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ソウルズ、2006年の休憩室の記憶

ソウルズ (角川文庫)

ソウルズ (角川文庫)

 図書館づいている近頃。田口ランディの未読本を借りて読みまくっている。これは短編集。ソウルズ(魂たち)という名前がついている。それぞれにちょっと、あっち側に足を突っ込んだ話。まあ田口ランディの小説はいつもそうだけど。現実味がありながら、そこに少し入りこむ異次元?霊的世界?みたいなのが醍醐味だ。読んでから気づいたけど、読んだことがある短編がいくつかあった。そういえば2006年当時、『野性時代』を毎月買っていたことがあったのだった。小川洋子田口ランディも短編を連載していたので。
 あの頃の読書というのは、一つの逃避でもあった。今もその側面はあるけれど、あの頃ほどじゃない。
 当時、札幌で働いていたのはコールセンターで、ほとんど女性しかいなかった。それなりに仲の良い友達もできたりして、女ばかりの職場にしては思ったほど人間関係もややこしくはなく、わたしは深入りせずに適度な距離を保って日々を何とかやり過ごしていた。それでも、女だけの休憩室で過ごす時間(特に食事のとき)は、その場に居合わせた誰かと話さずにはいられない。テレビを観ながら、興味のない話題に大袈裟に相槌を打ったりするのだ。それならまだいい。女子の話題はいつも容姿に触れずにはいられない。「○○ちゃんって足細いよねー。」「色白いよねー。」「スタイルいいよねー」「こないだエステ行ってー」とこんな話題になるとどうしても気後れしてしまう。そんな話題を「くだらない」と思うのは、自分なりの抵抗なのかもしれない。興味を持ったところで自分の容姿が変わるとは思えないからだ。どうしてもそこに相槌を打ったり自分の意見を述べる気分にはなれず、わたしは読書に逃げることを覚えた。本を真剣に読んでいる人に、無理に意見を求めることはないだろうと思ったから。
 すると今度は「何読んでるのー?」と聞かれる。説明するのも面倒でわたしは表紙を見せる。すると「ふーん。おもしろいの?」と言われる。「うん」と言う。「すごいねー、わたし読めない」・・・話は終了。
 読書を中断されたことに少し腹を立てる。こうしてわたしは女子的会話を避けることを確立していったつもりだった。しかし、いつしかそれが、「何かオススメの本貸して」「わたしにも読める本おしえて」といった具合に発展していった。そうだ、その頃わたしは、山本文緒田口ランディの本をせっせと貸していたのだった。彼女たちが興味を持って読めて、そしてまた何か読みたいと思ってもらえるようにと思って。
 隣の部署の、少し厳しい顔したやり手の先輩も、本の話になると笑顔になった。わたしの知らない古本屋をおしえてくれたりした。周りは、よくあの人と話せるね、とわたしに言ったけれど、本の話というのはそういう仕事のギスギスしたものも溶かしてくれるのかもしれない。
 この本を読んでいて、それらの、休憩室の記憶が蘇ってきた。