若かった日々

若かった日々 (新潮文庫)

若かった日々 (新潮文庫)

 一昨年、『体の贈り物』を読んで以来のレベッカ・ブラウン。自伝的短編集を読む。著者が中学生の頃には、酒びたりの父は家を出て行った。ずっとずっと過去の記憶。母との最期の日々。1つ1つの短編は鮮やかで、記憶がこの目の前で展開さてれいく感じに目を奪われるのだけど、全てが繊細で儚く切なげだ。もう戻れない日々。そして、苦しみは終わったのだというような静寂。
 3番目の妻と暮らす家のバスルームでバッタリと倒れて死んだ父。主人公は、翻弄され憎んだ父を許していくようになる。

父の死から遠ざかれば遠ざかるほど、そして、私が父に求めた不可能な望みから醒めれば醒めるほど、私は父にだんだん共感できるようになっていく(「自分の領分」)

 この本を読んでいて、『パピヨン』を思い出した。田口ランディもあれほどに苦しめられた父を、いつしか愛おしくも思うようになるのだ。そして作家というのは、こういった家族を取り巻く環境、傷、そういったものを糧にして生きてる人たちなんだなと改めて思う。書くことによって何かを許していく、認めていく、消化して収めていくのだろう。
 それにしても家庭環境の問題というのは、ずっとずっと続くのだな。それを受け入れて飲み込めるようになるのは、誰かが死んでしまってからということも多いのだろう。どう努力して苦しんでも修復できないようなことも沢山ある。そう考えていくと、ある種の諦め、そしてそこから「自分の人生を生きよう」と心に決めて進むことが心に平穏をもたらすのかもしれない。対立や反発を繰り返すのも骨が折れる。そして誰か(例え親であっても子であっても)を「矯正」するということはできっこないのだ。