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元気がでる介護術

元気がでる介護術 (岩波アクティブ新書)

元気がでる介護術 (岩波アクティブ新書)

 老人ホーム勤務後、理学療法士の資格を取得しまた同じ老人ホームに勤めるなんていう少し変わった経歴の持ち主である三好春樹氏のテンポの良いエッセイだ。独自の視点から切り込んできてなかなか痛快な気分になる。リハビリというととにかく少しでも動けるようになるように「頑張る」ものだと思いがちだけれど、老いを受け止め、ストレスの少ない方法で、自分のできることを探していくという考え方は確かにそうだなと思った。できないことを数え、それができるようになるために努力するというのはなかなか厳しいものがある。先が見えないことも多いはずだ。右手が動かなければ左手をうまく使う方法を習得したほうがもしかすると負担は少ないのかもしれない。とにかく、マニュアルではなく一人一人にあった方法を見つけていくしかないのだと思う。

 医療では問われることがまずない人生観や人間観まで介護では問われるのだ。
 医療や看護は生命を助けることを第一とする。生きることに意味がある、という世界である。それに対して介護では、どんな生き方に意味があるのか、と問われる世界なのだ。
 何が幸せなのかと言いかえてもいい。当然、一人一人みんな違っている。だからどんな介護がいい介護なのかは、医療や看護のように教科書を読めばわかるというわけにはいかないのだ。現場で一つ一つ手作りしていくよりないのである。

 もちろん、医療や看護も教科書通りというわけにはいかないだろうから、まあこれは誇張した表現ではあるとは思うけれど、医療が人を「生きることに意味がある」というふうに見ていることは確かだ。どんな状態でも命を助けるのが医療の役目である。病気が治るということだけに焦点が絞られていて、治癒すれば、人生そのものには関与しないのは当然だ。介護は、その、例えば治療が終わったあと、もうこれ以上の回復の見込みがないところからでも、人生に関わっていく。それぞれの生き方、生活スタイルに沿えるように。
 わたしも現場で毎回違う人に出会うたびに、人というもの、人生というものは本当にそれぞれなのだなーと実感しているところだ。そんなの当たり前で、分かりきっているようなことだけど、実際に目の当たりにすると、どーんと響く。生き方はいろいろあっていいのだと改めて思う。わたしはこれからいくつの人生に出会い、そこに立ち会っていくのだろうか。そして自分の生き方をどう捉えていくのだろうか。