病んだ家族、散乱した室内―援助者にとっての不全感と困惑について

精神科医である春日武彦氏が訪問援助で出会ったグロテスクな世界。家という異界について、ブラックボックスとしての家族について、援助者向けに書かれた本。わたしたちはどう受けとめ、どう対処していけばいいのだろうか・・・。

家という密室では何が起こっていても不思議はない。扉一枚隔てて全く別世界が広がっていたりする。わたしたちが「常識」と思っていることはことごとく崩される。ここには理解しがたい家族が沢山出てくる。だけどもきっと、その人だけが特別なわけでなく、わたしにもあなたにも当てはまる可能性がある。日常で繰り返し行われていること。それが当たり前になり麻痺していく日々。人の家の散らかりようや独特の匂いには驚いても、我が家のそれには気づかなかったりするものだ。
介護すべき老人の、その家族が精神疾患を持っている(ような雰囲気)ということもたまにある。その家族はケアを受けているのか?と気になるのだけれど、いちヘルパーが関与できる問題でもなく、ただやるべきことをこなして帰るだけなのだが。その点、春日氏は医者であるから、そこまで介入できるのだな。わたしはいつも、当人に対するケアでも垣根を越えられないことにもやもやしている。ヘルパーの仕事の幅の広さと奥深さ、と共にいつも限界を意識させられる。

また、直接ケアとは関係ないが、汚い家で出された茶菓子に手をつけるか否か・・・にはわたしも遭遇する場面が多いだけに笑ってしまった。規則としては一切食べないということになっているが、それにより利用者の親切心を傷つけたり、さらには「わたしが食べて!って言ってるのに、食べられないの?」と怒りだす人までいるもんだから・・・。

訪問援助(介護や看護や相談業務など)に関わる人には、考えさせられる内容であり、どう受け止めていくか、どう援助していくか、心の持ち方のヒントも多く詰まった本だった。特に困難事例と呼ばれるような家庭に入る人にはおすすめの1冊。