叫ぶ人

気持ちがモヤモヤとしていて、それを書きたいのだけど書けないのだけど書きたいのだけど、何故書きたいかというと、きっと自分の思いを整理して、そして確かめたいのだと思った。いつも日常の日記は別の場所で書いているんだけど、そこに書くには何となく気が引けて、書けずにいた。別に表日記・裏日記、というわけでもないんだけど、でも、今日はここで書く。書くことにした。
私は、知的障がいを持つ人と一緒に活動をするボランティアスタッフをやっている。彼/彼女らに会うと、何だか自分の中の四角い価値観とか「ねばならない」的な思考とかが解放されて、自由な気分になれる。「支援する」という立場でありながら、生きてく上での沢山のヒントをもらい、口にする言葉と腹の中の言葉が一致していく感覚を味わっていた。何だろう。すごく甘えていたんだと思う。みんな私を温かく受け入れてくれて、ノープロブレムな甘ったるい関係に浸って、だらだらしてたんだと思う。
しかし、それが一変する出来事が起こった。
クリスマス会の準備をしている時だった。朝から様子がおかしかったA君。輪に入らずポツンとしてるから、声をかけた。私と同じ作業をする班だったから。「大丈夫?こっち来ないの?」
でもA君は目を合わせず拒否した。経験豊富なスタッフBさんに相談したら「様子見て、時間置いてから声かけしてみよう」と言った。なので、しばらくそのままみんなで準備作業をしていた。
しばらくしてA君はふてくされた態度で、こちらに来た。わたしは席をあけて、「ここ座っていいよ」と言うとA君は黙ってそこに座る。A君の隣には、Cさんという女性スタッフが座った。わたしはA君とCさんの話のやりとりを、横で作業しながら聴いていた。
不穏なムードが漂う。
「ここは俺の居場所なんだ!」とA君が声を荒げた。Cさんは「A君だけの場所じゃないよ!みんなの場所だよ!」と強い口調で言った瞬間・・・・
A君は立ちあがり、自分の座っていたイスを持ち上げ、その場にいたスタッフBさんに投げつけた。
Bさんは察知していて、手で止め、イスは直撃しなかった。主催者側の男性が走って来て止めて、A君を抑えた。A君はずっと何かを叫んでいる。「俺は、いつも、一人なんだ。何度も死のうとしたんだ」そんな言葉がとぎれとぎれに聞こえて来た。ざわざわとした空気。みんなが驚いて見ている。
わたしは、自分の心臓のバクバクと、泣きそうに湧き上がって来る感情をぐっとこらえて、その場から動けなかった。何もできない自分。一緒に抑えることもできず、言葉で訴えかけることもできず、ただ傍観しているだけだ。傍観?それよりは、固まってしまう感覚だった。ただ感情の渦は腹でうねっていた。
少し落ち着いたところで、ベテランスタッフのDさんがA君の話を聴いて、何とか収まりがついた。
主催者側は、これ以上A君の暴力がエスカレートするのなら、危険回避のために排除すると言う。スタッフもそれに頷く。私はショックと混乱の中に居た。
次の日、冷静さを取り戻したA君と話をした。
「つらかったんだね」と私が言うとA君は「つらかった」と言った。そして、職場でのいじめのこと、家でも話を聴いてもらえないこと、だからこの場所だけが自分にとって安心できる場所であること、でも話を聴いてもらえなくて感情が爆発したことなど、はっきりと話してくれた。
「でも、爆発されるとわたしたちも辛いから、その前に言ってね。そして、BさんCさんにちゃんと謝るんだよ」とわたしはA君に言った。A君は「うん」と言った。
それからしばらく経って、でも、何かが腑に落ちない気持ちは抜けない。
暴力はもちろん肯定できない。「問題行動」と言われる。でも、その前に、スタッフは彼の異変に気づいていたはず。ならば何故、まず彼の話を共感的に聴くことができなかったのか。普段とは様子が違うというのは誰の目から見ても明らかだったのだから。支援する側に甘え、馴れ合いがあり、彼に対して真摯な態度を取ったとは言えない。
それなのに、暴力だけを取り上げて、排除する方向に持って行ってしまえば、彼の居場所は本当に無くなってしまう。ベテランスタッフたちの言動を見ていて、私は彼の行動に寛容すぎるのだろうか?という反省もあった。だってダメなものはダメなのだから。でも、その行動には意味があった。いわゆる「キレる」きっかけを作ったのはスタッフだし、そこに至るまでに積み重なって来た感情の層があったはずだ。
そんなことを悶々と毎日考えていた。自分の甘さと、周囲の厳しさと、そしてA君の思いと、これからの活動と。釈然としない思いがぐるぐるとまわってる。協調、調和、みんな仲良く。大事なことだ。でも、人はそんな仏のような心だけを持って生きてるわけじゃない。叫んだ人こそ本当に支援が必要な人なのかもしれないのに。
しかし、私に何ができるっていうんだ。ベテランスタッフの言ってる、みんなの安全もわかるけど、けど、けど!!
私はもしかすると、もっともっと体当たりな、魂と魂がぶつかり合うような、そんな取っ組み合いの人間関係を求めているのかもしれない。これが仕事ではなくボランティアだから、こんなふうなのか。もっと熱く、激しく、ぶつかりあってでも、成長していく関係を築きたいって思う。
どうしたらいいのか。
twitterでつぶやく多くの支援者たちの言葉に救われつつ、今、自分の在り方を、模索している。