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『八本脚の蝶』/二階堂奥歯

  

八本脚の蝶

八本脚の蝶

 

 末井昭さんが〈この社会で何の疑いもなく生きている人より、自殺した人の感性を信じたい〉と紹介していた女性編集者でレビュアーだった二階堂奥歯の『八本脚の蝶』(ポプラ社)を読み始めた。
 同名のブログはまだ存在していて、最後は衝撃的な言葉で締めくくられている。初めてブログを検索してページを開いた時には高揚感と震えを感じた。心臓がバクバクして、眠る時も心の中で「二階堂奥歯二階堂奥歯・・・」と繰り返し思い出してはハッとしていた。ブログという誰もが発信できるツールの、突然の断絶が生々しくリアルに感じられ心がざわついた。

 実際に本を手に取ってみると、ブログを書物にしただけで、これほどの落ち着きと質感を持って、日記文学になるのだなと、やっとわたし自身が地に足がついたような状態になった。しかし読み進めていくうちにじわじわと底が抜けていく。
 20代女子らしく化粧品やファッションの話も出て来るが、そこに綴られているのは圧倒的な読書の山。
 世界と真っ向から対峙しているかのような、でも幻想的な、夢か現実か、人生自体が長い長い夢なのか・・・?などど、考えざるを得なくなり、ぬるま湯に浸かって退行を始めていたわたしは熱湯と冷水を方々から一気に浴びせられたような気持ちになるのだった。

 

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

 
 
第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

 

  読書について綴った本で思い出されるのはその名も『打ちのめされるようなすごい本』/米原万理(文春文庫)である。この本はロシア語通訳であり作家である米原氏の、がん闘病記であり読書日記だ。わたしは6年ほど前に東京外国語大学で聴講生として現役学生とともに学んでいた。その通学途中にこの本をよく読んでいたことを思い出す。(ちなみに米原氏は東京外国語大学卒なのです)何を読むか考えあぐねている人にも、この本はおすすめです。そういった意味合いで推薦するならば、又吉直樹の『第2図書係補佐』もとても良いと思う。わたしは、ここで紹介されている本を順番に読み漁って出会った本で、お気に入りになった作家もいるくらい。

 はぁーそれにしても!
 二階堂奥歯。恐ろしくわたしの根幹を揺るがしてくるような本にまた出会ってしまった。否、そもそも根幹など無かったのだ。
 まだ動悸がしている。